世の中で1番きつい仕事って何かな…と、ふと考えていました。
真っ先に頭に浮かんだのが「阪神タイガースの監督」。
これは、キツい。
本当に、キツイ。
僕はスポーツ紙の記者として、ある監督(記事を読めば大体分かると思います^^;)を2年間担当しましたが、「1億円積まれてもやりたくない、この仕事」と思ってました。
» 参考:プロフィール
理由は主に下記。
- ヤジ、非難…一言目に「辞めろ!」
- 実は中間管理職…株主総会でも糾弾
- 2位以下は全て一緒…厳しい評価査定
- 世界一のマスコミ数…常に監視、追求
- プライベートだって週刊誌に狙われる
- 長時間労働…残業手当なんて当然ない
- 負ければ責任追及…拒否れば責任放棄
上記のとおり。
順番に説明します。
世の中で1番きつい仕事は阪神タイガースの監督じゃないかな【元担当記者の語り】

きつい①:ヤジ、非難…一言目に「辞めろ」

日本一熱狂的と言われる阪神ファンのヤジは強烈。
”一言目” です。
一言目には「〇〇、辞めろ!」です。
さらに球場だけでなく、ホテルで、移動中の空港・駅で。
四六時中、 所かまわず、退任要求される職業って、阪神の監督以外ない。
当時監督を務めていた金本知憲氏が、ホテルで自身を侮辱する発言を浴びせた男性ファンと揉み合いになり、SNSで話題になったことがありました。
この件など典型ですよね。「100の頑張れ」より「1の心ない言葉」が刺さるのが人間なのに、阪神の監督は「万の心ない言葉」を浴びます。
甲子園のヤジはもはや ”名物” ですが、僕が個人的に『こりゃ強烈だわ』と感じたのは神宮球場。
球場の導線によるもので、監督らは試合後、グラウンドを横切りバスへと向かうため、負け試合ではフェンスにしがみついたファンから、嵐の怒号が飛んできます。
きつい②:実は中間管理職…株主総会も痛烈

監督って、実はツライ中間管理職。
上には球団社長がいて、オーナーがいる。
下にはコーチ、選手、球団スタッフ…。
プロ野球球団の社長やオーナーといっても、野球に関しては素人。
そんな ”お上” から、アレヤコレヤ、とね。
下からは「ベンチがアホやから試合できへん」みたいなことも言われたり…。
※元阪神・江本孟紀さんの「名言」。
さらに株主総会(阪急阪神ホールディングス)も強烈で、「〇〇監督の采配はどうなんですか?」「なんで変な外国人ばかり獲ってくるの?」みたいな質問が普通に飛ぶ。(※監督は株主総会の場にはいない)
まあ結果を出さないと株主から糾弾されるのは、一般社会でも同じだけど。
球団と現場…両者の一体感、または”歪み”みたいなものを、ドラフト会議のタイミングで僕は感じていました。球団主導か、現場主導かー。
野球のプロである現場の意見を最重視するのが理に適ってますが、球団も経営だから新卒採用(ドラフト)には口を出したい。そこがバラバラだと…。
きつい③:2位以下はすべて一緒…厳しい評価査定

一般社会の会社員と同じように、阪神タイガースの監督にもKGI(最終目標)が課せられます。
「優勝」ですよね。
2位以下は、最下位と一緒です。
そしてシーズン終了後に行われるオーナー報告や総括会見で「優勝を逃して申し訳ない」との謝罪が待つ。
査定キビシイ…。
Aクラス(1〜3位)に入ればファンは狂喜乱舞、監督上機嫌、なんて時代(いわゆる暗黒時代)がありましたが、ファンの目線も高くなって、もう「優勝」以外、満足してくれません。
僕も仕事上、多くの阪神ファンの方と接しましたが、もうみなさん、意識が高い^^;
きつい④:世界一のマスコミ数…常に監視、ボコボコ

阪神タイガースを取材する報道陣の数は、実は、あのニューヨーク・ヤンキースより多いと言われています。
勝手な決めつけですが、ヤンキースより多ければ、もう世界一でしょう。
報道陣の射るような目から、常に監督は監視されます。
そして、常に ”物理的に” 追っかけられます。
(元追いかける側の僕が言うのもなんですが…)
球場、駅・空港、ホテル、ときには自宅まで、、、執念も世界一の虎番記者は、どこまでもネタを求めてへばりついてきます。
阪神の監督に、安住の地はあるのでしょうか?
もう時効でしょうから書きますが、車の尾行もやりました^^;
たとえば「今晩、監督が誰か要人と会う」と分かって、「でも、会う場所がわからない」といったケース。球場から出た監督を乗せた車を、ひたすら追うみたいな…。
なんか異常ですが、それぐらいしないと他社に勝つことができなかった、必死でしたね。
きつい⑤:週刊誌にプライベートだって狙われる

タイガースの監督を追いかけるのは、スポーツ紙やテレビ局だけじゃないです。
週刊誌だって、狙います。
僕が担当した監督は、ほら、あの、結婚しているのに他の女性とね、みたいな(ごまかしようがない^^;)のが週刊誌により報じられました。
もう面倒なので直球で言うと、その「不倫」の記事を抜いたのが、『週刊新◯』でした。
で、驚くことに、その『週刊新◯』から、僕にまで取材の電話がありました。
ざっくり言うと「〇〇監督の情報がほしい」と。
下世話なことだったんで軽くスルーしましたが、同じマスコミ人として取材網には感心した出来事でしたね。
きつい⑥:長時間労働…残業手当なんてないよ

阪神の監督、結構、ブラックですよ^^;
ナイターで延長戦になったら、試合後のミーティング終了時には午後11時なんてザラ。
そこに移動、ミーティング、2軍のデーゲーム視察、、、と山盛りに日々のタスクがあります。
年間でも完全なオフなんて、12月ぐらい。
残業代なんて、もちろんなし。
一般社会なら、完全にブラック認定される職業でしょう。
きつい⑦:負ければ責任追及…拒否れば責任放棄

試合後、監督の ”職務” に会見対応があります。
負け試合後は、容赦なく、采配意図を問う質問を浴びます。
- 「なぜ、あそこで先発を続投させたのか?」
- 「なぜ、送りバントを、しなかったのか?」
- 「代打という選択肢は頭になかったのか?」
上記のとおり。
「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」…。
国会答弁でも、ここまでキツくないでしょう。
負け試合後は全員が野党です。
僕の担当時代では、1度だけ、監督が会見拒否したことがありました。
マスコミの人間として「説明責任を果たすべし〜」みたいな記事を書いた記憶がありますが、正直、(別にいいやろ)が本音でした。
監督だって人間、怒りMAXなら冷静に会見なんてできないでしょう。
世の中で1番きつい仕事は阪神タイガースの監督じゃないかな【元担当記者の語り】:おわりに
以上です。
2021年は、本当に阪神、優勝できるかもですね。
タイガースの監督のキツイ重責が、喜びに変わることを切に願って…。
ガンバレ、佐藤輝。